私は東京高師(現在の東京教育大)の英語教員養成科を卒業し、旧制中学の英語教師をしていた。
そんな私のところに、あるとき、受験界の大御所、英語の岡田實麿先生から、人づてに、「出版社から英習字本を頼まれたが、やってみないか」と言って来て下さった。弱輩の私に出来るかな、という不安もあったが、よい経験にもなると思ってお引き受けした。この本がよく売れて、6、7年間、私も印税の半分をいただいたものである。
これが縁で、私は岡田先生の教科書や参考書の仕事を手伝うようになり、いつしか、先生が忙しいときなどに、この予備校で代講を勤めるようになった。確か昭和14年ごろのことである。その後しばらくして、私は中学教師をやめて、予備校の専任教師になったのである。
[注]
本文は故鈴木長十先生が昭和42年ごろ書かれた原稿です。