ビジュアル英文解釈 のバックアップ(No.1)


概要 Edit

特徴 Edit

  • 英語のひとつひとつの文を文法的に分析・構文把握するために必要な知識・基本的な考え方を紹介しつつ、実際の中・長文で実践していく参考書。
    • 英文解釈教室』とともに、同種の参考書の、いってみればタネ本のひとつである。
  • 入不二(1997)*1によると、まず体系を示してそれを習得し英文に適用させられるようにしたのが『英文解釈教室』で、体系を示すのでなく英文を読む際の基本姿勢を教えることに徹したのが『ビジュアル英文解釈』である。
    • 入不二師によると「『体系』を隠し、『構造』より『流れ』を重視した」。
    • 現在でも、現・代々木ゼミナール仲本浩喜師は、『英語構文<B>』(代ゼミのテキスト)では、体系を厳密に提示する「解釈教室」方式ではなく、一冊を学んでいく中で全体をらせん状にたどっていく「ビジュアル」方式でやっている。(仲本師ツイッターより)
  • 言語を実践する言語主体の立場である「主体的立場」(時枝誠記)に立って、文構造の分析を結果として示すのではなく、文頭から文末に向けて、どのように文法知識を用いながら英文を理解すべきかを示している。
  • 当時、『実況中継シリーズ』(語学春秋社)などで台頭してきた講義型参考書を意識して、入不二師のいう「『現場性』の取り込み」がなされている。
    • 各回、まず「焦点」という項目で初めて出てくる事項の解説を行い、その後練習問題が掲載され、その練習問題の検討を「研究」で行い、大意を示す
      • ただし実際は和訳例といっていい代物であり、「大意」としているのは伊藤師のこだわりである。
    • その上で、複数の生徒と伊藤和夫師との対話調の文章が続いてその回の注意点や補足・発展的話題などを検討していく、という構成になっている。
      • 久山道彦師によると、伊藤師はソクラテスの弁証法を意識してこの対話篇を記したそうだ。西洋哲学科を卒業し、プラトンの著作に親しんでいた伊藤師だからこそ著せた一冊と言えるだろう。
  • なお、『英文解釈教室』と違い隅々まで網羅してないという意味で「基本姿勢を教えることに徹した」とあるだけで、この本で大学入試に必要なことはどのレベルの大学であれきちんと習得できる。
  • これだけ参考書がでまわってもなお、構文把握における頭の働かせかたを教えてくれる本は、多くはない。
  • 注意点として、本書は精読時の構文把握のやり方を示したものであり、速読が重視される傾向のある現在の受験英語の対策にそのまま適用するのは困難である。
    • 重厚な出題で有名だった京都大学が2016年に出題傾向を変えてからは、『英文解釈教室』と同じく役目を終えた本と見なす向きもある。
    • 英文解釈教室』同様、一部では「化石」と称する声も。
    • 2冊とも、総じて「難解な構造の英文をいかにして日本語に紐解いていくか」ということを主眼に置いているということに注意が必要である。
  • 伊藤師によると、英文解釈教室はかいつまんでやってもそれなりに効果があるが、ビジュアル英文解釈はpart1の頭からやらないと効果が薄いとのこと。partⅡまで仕上げれば(当時の出題傾向の)東大にも入れるとのこと。(伊藤和夫の英語学習法、59頁)
  • なお、『英文解釈教室』と本書の過渡期的著作に『ルールとパターンの英文解釈』(旺文社、1994年/研究社、2018年(新版))があり、本書よりも「ルール」が二つ多い。
    • 元々は「旺文社大学受験ラジオ講座」および、そのカセットテープ教材(ラ講テープライブラリー)で、書籍化自体は本書よりも遅い。
    • ちなみに、新版は伊藤師の教え子である翻訳家の越前敏弥氏の『文芸翻訳教室』と同日発売で、同氏も『ルールとパターンの英文解釈』を勧めている。

PART Ⅰ Edit

PART Ⅱ Edit

テーマ別英文読解教室と英語長文読解教室はこの本と接続関係にある。また、この2冊の代わりになる教材として英文和訳演習上級編と英語総合問題演習上級編と英語要旨大意問題演習が挙げられており、5冊のうちの2冊をやればよいとのことだ。(伊藤和夫の英語学習法、86頁)

ルールとパターンの英文解釈(参考) Edit

『伊藤のルールとパターンの英文解釈(ラ講テープライブラリー)』(旺文社、1984年)
伊藤和夫の ルールとパターンの英文解釈(大学受験JランドBOOK)』(旺文社、1994年3月28日)
伊藤和夫の ルールとパターンの英文解釈(大学受験JランドBOOK)』(旺文社/㈱デジタルパブリッシングサービス、2004年6月20日(オンデマンド版))
『[新版] ルールとパターンの英文解釈』(研究社、2018年4月19日)

  • 1983年4月~1984年1月まで文化放送とラジオ短波をキーステーションに旺文社の提供で放送されていた「旺文社大学受験ラジオ講座」(ラ講)の「伊藤のルールとパターンの英文解釈」を文字起こししたもの。
  • 放送終了後すぐに音声教材ラ講テープライブラリー 伊藤のルールとパターンの英文解釈」というテキスト1冊、カセットテープ20巻の音声教材として出版さた。
  • 書籍化されたのは放送終了の10年後の1994年3月。
  • 本放送とラ講テープライブラリーでは「比較」が一切扱われていなかったが、書籍化された時に、翌年放送の「伊藤のルールとパターンの英文解釈演習」という応用篇で比較を扱った部分を差し替えて(つまり、元の講座は一つ減ったが、復習的内容だったので支障はなかった)網羅性を高くして出版された。
  • 書籍版には、放送当時、別冊解答集にあった練習問題「For Further Study」は全部カットされた。
    • For Further Studyでは、講義で扱った文章の中から特にポイントになる部分を復習できるように2~3行(時に5~6行)の英文解釈の問題と解答が2~3題づつあった。
    • 研究社の新版でもカットされている。
  • ビジュアル英文解釈Ⅰ・Ⅱ」とはほとんど重なり、「解釈教室シリーズ」と基本的に中途半端に重なる本と言える。
    • 強いて言うなら「ルールとパターンの英文解釈」を読んでから「旧版の英文解釈教室」と「長文読解教室」に進むというのが一番無駄のないパターンだと思われる。多少の重なりを甘んじれば、今の「英文解釈教室」をこの本の後にやるのも良い。
  • 英文解釈教室シリーズ」や「ビジュアル英文解釈」と色々と中途半端にダブる。
    • それらの本はこの「ルールとパターンの英文解釈」の後に出た本ばかりであるから、「ビジュアル」「教室シリーズ」等をやっている人はやる必要がない。
    • 英文解釈教室[入門]」「同[基礎]」はほとんどレベル的には重なる。
      • 入門の方はこの本の手前の英文法の確認という意味と割り切れば、入門をやってからこの本に取り組んでもよい。しかし、それでもこの本の《10》くらいまではレベル的にかぶる。基礎編はほぼ重なっていると言ってよい。到達点は「英文解釈教室」の最初くらい、という感じである。
  • 伊藤和夫の「ルールとパターン」というとほとんどの人が「ビジュアル英文解釈」を思い浮かべるが、ルールとパターンという考え方はこちらの方がオリジナル。
    • パターンについてはどちらも変わらない。
    • しかし、ルールの方は「ビジュアル英文解釈」は11個、本書では13個となっている。
    • 本書における「等位接続詞のあとのコンマについてのルール」「長い句の扱い方についてのルール」がビジュアルでは削られている。
  • 英語が苦手で時間がない受験生は「ビジュアル英文解釈」と同じくらいのレベルからスタートして、大体同じくらいの到達点に1冊で到達できる。
    • しかも、全部で40講(そのうち1講はルールとパターンの説明だけ)という量も「やり切れる」という希望を感じさせてくれる。
    • ビジュアル英文解釈」と本書は出発点と到達点がほとんど同じである(到達点は本書の方が若干高い)。
    • 同じスタートで同じ到達点なら、2冊より1冊ですむ方がいい。また「ビジュアル英文解釈」に出てくる不自然な学生の話もないので無駄なく進むことができる。
  • 以上より、ビジュアルよりこれをやるべきという人もいる。

参考文献 Edit